ワークシェアリングという言葉を聞いた事がありますか。ワークシェアリングとは、数人でひとつの仕事をわかちあうこと、です。ベルリンで就職活動をしながら仕事の在り方についてよく考えるのですが、その中でもワークシェアリングという新しい働き方に注目しています。ワークシェアリングという働き方について考えていきたいと思います。
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ルームメイトからワークシェアリングという考え方を聞いて
以前住んでいたフラットで、ある日ルームメイトと仕事の話していました。「早くフルタイムの仕事がしたいよ。」とぼそっと言ったら、「えっ、なんでフルタイムである必要があるの?そんなに働く必要ある?」と驚きの返答が返ってきました。
私は、日本にいるときよりも時間的にみると明らかに働いておらず、「ベルリンでも働くぞー!」と意気込んできただけに、びっくりしてしまいました。
でも、彼の考え方をよくよく聞くと、うなずけるものでした。「ドイツの失業率は、7%の中で、ベルリンの失業率は11.3%と突出して高いんだよ。皆で仕事を分ければ、失業率を下げることができるし、より多くの人が仕事をすることができるでしょ。」
自分が雇われている時は、失業率は他人事のようでしたが、実際に自分が失業の状態になってみると、仕事を得られるありがたみを感じられます。一部の人だけが身を粉にして働き、高い税金を納めて、そして仕事にありつけなかった人が、彼らが払った税金から賄われる生活保障で生活します。いかにも悪循環にみえます。理想論かもしれませんが、働きすぎの人の労働を減らし、その分を仕事がない人に与えられないのでしょうか。
彼は、続けます。「フルタイムで働かないと稼げないっていうけど、そんなにお金必要?僕は、高い車も高いブランド服もいらない。働きすぎたり、他の人の仕事を奪うくらいだったら、ワークシェアしながら生活ができる分だけ働きたい。」
彼の働き方の考え方には、自分がどうしたいか、だけではなく、他の人がどうなるのか、まで考えが及んでいます。自分が働く事で、他の人がどうなるかなんて、考えた事ありますか。私は自分がいかに仕事が得られるか、生活できるか、しか考えていませんでした。社会の全体をみて働き方を考えるのが、ワークシェアリングの考え方なのです。
そもそもワークシェアリングって?
Work sharing、はたまたJob sharingという考え方は、1970年代から、仕立屋さんで働く女性が、専業主婦とフルタイム労働の間中間財として取り入られたたのが始まりだったそうです。2000年代に入ると、より多くの女性が社会で働くようになり、この考え方が広まりました。
最近では、仕事があまりない会社で、解雇をする代わりに1人分の労働を2人でわけて解雇を防いだりといった使われ方もされています。ワークシェアリングという考え方の根底には、みんなでシェアすることで、過度(働きすぎ、会社の倒産)を防ごうというものがあります。
一部の調査では、ワークシェアリングを導入したことによって、仕事全体の効率が上がったという結果も出ているそうです。限られた時間で成果を残そう、という結果なのかもしれません。
ワークシェアリングしている人は案外多い
ワークシェアリングの考え方は、彼が特別なのかと思っていましたが、そうではないようです。その後出会ったベルリンで働く人々も、意図してか意図せずかはわかりませんが、同じような働き方をしている人が結構います。
私の部屋のオーナーは、本業フォトグラファーですが、週末だけタクシー運転手として働いています。「毎週末働くの?」と聞いたら、「いや、現金が必要な時だけ。」と何ともシンプルな答えが返ってきました。目的が明確でいいなあと思います。
もう一人、先日インテリアデザインStudy groupを立ち上げたニコラも、同様です。平日の午前中4時間だけ大学の事務として働き、午後は趣味の声楽、ヨガ、デザインの勉強に費やしているそう。
私が日本で働いている時は、フルタイムで正社員で働くことが正で、他の選択肢は誤と見ていました。でも、仕事とプライベートの時間をうまく使いこなし、仕事をわけあう彼らの生活を見て、ひとりでガツガツ働くだけが選択肢ではないのかもしれない、と感じています。
【まとめ】他人と自分を思いやるワークシェアリングという働き方
仕事を他人と分け合い、自分のプライベート時間を充実させるワークシェアリングという働き方。実際には、それで生活できるのか、という問題があることも事実ですが、実際に行っている人がいるだけに、不可能ではないと思います。要は、この考え方を受け入れることができるかなのではないでしょうか。