難民問題が問題になっていますが、ドイツでは移民問題も避けては通れない課題となっています。私が初めて住んだエリアが、たまたまトルコ人移民とアラブ系移民が多いエリアだったので、移民の方々はどんな気持ちを持っているのだろうと気になっていました。
先週末には、トルコ人移民の人のデモを目の当たりにし、移民の人が抱えている問題と発する声が大きくなってきているのかなと感じています。同じくイスラエルからの移民でもある現在の部屋のオーナーと、トルコ人移民について話し、トルコ人移民の問題からアイデンティティの問題を考えました。
ドイツにはトルコ人移民がたくさん
トルコ人移民は、ドイツの移民の中でも、もっとも割合が大きく、ドイツ全体で300万人と言われています。トルコ人移民は、そもそも1960年代に、労働者不足に悩んでいた政府が、募集した招待移民です。トルコ人以外にも、ギリシャ、イタリア、ポーランドといった国から若い労働者が移民してきました。
数十年が過ぎ、労働状況が変わったため、そこまで労働力が必要なくなります。仕事がなくなってしまうわけですが、それでも多くのトルコ人移民の方々はドイツに残りたいと言ったので、ドイツ政府は滞在の許可を出しました。
そして、トルコ人移民は、トルコから連れてきたトルコ人女性と結婚し、家庭を作り始めした。その子供達は、ドイツで生まれ育ったドイツ人です。でも、多くがトルコ人夫婦の間に生まれ、トルコ人コミュニティの中で育っているので、トルコ人としてのアイデンティティを強く持っているようです。
トルコ人移民に横たわる問題とは
ドイツには、あからさまな人種差別はないと思います。私もベルリンに住み始めて、差別を感じたことはありません。それでも、トルコ人移民は、ドイツ人との間に「ガラスの壁」があると感じているようです。トルコ人移民の方が抱える問題ってどんなものがあるのでしょう。
1)ドイツ人として生まれ育っているのに、ドイツ人と同等の就業機会がない
ドイツで生まれ育ち、ドイツ語を話すのにもかかわらず、トルコ人移民は得てしてドイツ人と同様の就業機会を得られないのだそうです。
2)トルコでは、自分はドイツ人と感じる
ドイツで良い仕事にありつけない若いトルコ人達は、トルコに向かいます。彼らは、ドイツ語に加え、トルコ語そして英語も話せますし、ドイツの大学を出ているので、トルコではより良い就業機会がかる可能性が高いと考えるのは当然です。
それでも、トルコ人移民はトルコに行くと、「自分がドイツ人だ」と感じるそうです。やはりドイツで生まれ育ったからには、ドイツ人としての考え方が無意識下にもしみ込んでいるのでしょう。
トルコ人移民は、ドイツ人としてのアイデンティティとトルコ人のアイデンティティのはざまで、自分の行き場に迷ってしまうことが多いのだそうです。
2つの母国の狭間で
最近目の当たりにしたトルコ人のデモを見る限りだと、トルコ人はドイツの社会に受け入れてもらいたがっているのかな、と感じました。見えないガラスの壁を乗り越えたいのかな、と。
だからといって、ドイツ人側が一方的にガラスの壁を設けているのか、とは言い切れなさそうです。トルコ人コミュニティは強固です。私が以前住んでいたウェディング地区は、ドイツにいるのか、トルコにいるのかときにわからなくなるくらい、トルコ系の人が多く、お店もトルコ系ばかりでした。
自身もイスラエルからの移民である部屋のオーナーは、こう言っていました。「確かに、ガラスの壁はあるかもしれない。でも、ドイツ人がトルコ人に話しかけにいっても、戸を閉ざされるんだよ。それで、どうやって対話すればいいのかな?」
ドイツにおける移民の問題に横たわる溝は大きく、すっと解決できる問題ではなさそうです。でも、多くの難民がヨーロッパに到着しているなかで、どうやって難民と移民の人を社会に受け入れていくかを長い目で考えていかないと、この問題は、どんどん大きくなるばかりではないでしょうか。
最後に
トルコ人移民のふたつのアイデンティティを持つ複雑な心境に触れて、日本で生まれ育ち、日本文化が自分の文化だと言い切れることって幸せなのかもしれないと思いました。移民におけるアイデンティティの問題は根深く、そう簡単に解決できるものではなさそうです。
でも、近い将来、移民・難民だけではなく、人が大移動する時代がやってくると言われています。その中でも、どこに自分のアイデンティティがあり文化があるのか、を明確に持っておくことが、必要となってくるはずです。
しましま says
オランダ在住日本人です。以前、ベルリンでトラム?地下鉄?に乗った時に、トルコ人の子供たちのガラの悪さに驚いた記憶があります(オランダだとトルコ系よりモロッコ系の方が質が悪いと言われているので)。
移民問題はほんとに複雑ですね…。オランダに10年住んでいますが、特にイスラム系移民は、ある意味興味深く、しかし知れば知るほど訳が分からなくなってきます。2,3世は1世よりも社会に溶け込んでいるのかと思いきや、自分探しでよりイスラムっぽい格好をしたり、特に女性は、ヘッドスカーフや化粧など、どう見ても西洋的でないものをお仕着せでなく、自ら好んでやっている印象で、面白いのは、母はヘッドスカーフをしないのに娘がしているようなケースです。
私も以前は、自分が日本人なので外国人の多いエリアに住みたかったのですが、その外国人の間にも微妙な差別意識?のようなものがあり、私のように1世でオランダ語がネーティブ並に喋れないものは、見向きもされないと感じることがあります。
オランダでは割とトルコ系は溶け込んでいる風に捉えられていますが、特に男性はマッチョ志向が強く、たまに面倒くさいと感じることがあります(対立すると絶対に引きませんね)。ドイツにも知り合いがいて、デュッセルやケルンにも行きましたが、あそこまでトルコ人を入れて、国としてうまくやっているのかと心から心配しました。彼らは多産ですし、いつか、ネーティブとの比率が逆転するのではと思っていますが、将来イスラムの国になってしまうという話は、あながち非現実的ではないようにも思います。これから100年後、200年後が見てみたいものです。ヨーロッパは現状をとどめているのでしょうか。
Ayumi Saito says
コメントありがとうございます。移民事情は本当に複雑ですよね・・。ドイツ人に聞いても、人によって見方が違いますし。ドイツは、トルコ人以外にも、ベトナム系やイタリア系の移民の方も多いのですが、やはりイスラム系の移民の方は独自の文化を貫いている印象があります。