カタルーニャ州独立の動きが近日さらに激しくなっています。先日行われた州議会選挙では、カタルーニャ州独立派が多数議席を獲得し、一歩また独立へ向けて駒を進めたという動きがみられています。
スペインの魅力のひとつは、カタルーニャ地方、バスク地方、ガリシア地方、アンダルシア地方と、個性豊かな各地方文化だと私は思います。
旅行中は、その中でも、カタルーニャ州が独立へとかけるパワーは、旅行者の私にもひしひしと感じられるものがありました。街中には、至る所にカタルーニャ地方の旗がかけられており、スペインの国旗を目にすることはありませんでした。
でも、実際カタルーニャ州独立についてスペイン人はどう考えているのでしょう?実際に、バルセロナ出身の友人セルヒオととマドリード出身のスペイン人ハビにカタルーニャ州独立についてどう思っているのか聞いてみることにしました。
まず、カタルーニャ州独立にある背景についておさらい
カタルーニャ州とは、言わずとしれたバルセロナを州都とする、スペイン北東部にある自治州です。自治権が認められており、州内ではカタルーニャ語が使用されています。
カタルーニャ州独立の背景には、カタルーニャ地方が、自治権を認められたり、剥奪されたりと、政治に翻弄され続けているという状況があります。
もともと、カタルーニャ地方は、フランス南部の一部としてカタルーニャ地方は組み込まれていましたが、13世紀フランスはカタルーニャ君主国の独立を承認しました。
15世紀には、アラゴン連合王国(カタルーニャ君主国を中心とする、中世南ヨーロッパの複合国家。)王子のフェルナンド2世と、カスティーリャ王国(中世ヨーロッパにおけるイベリア半島中央部にあった王国。後のスペイン王国の中核を担う。)王女のイサベル1世が結婚し、ほぼ今のスペインの領域が出来上がります。中世時代の歴史によくある、政略結婚にて今のスペインが出来上がっていったんですね。
18世紀初頭にスペイン継承戦争が起こり、カタルーニャ君主国は自治権を失いまが、1931年、スペインが第二共和政となった年に、カタルーニャ君主国は再び自治権を得ます。
その後、スペイン市民戦争が起こると、フランコ独裁のもとで、カタルーニャ語の使用は大幅に制限されることとなり、カタルーニャ愛国主義と結びつく運動もまた制限されました。スペイン市民戦争は1939年に終結しますが、こういった制限は続き、フランコ将軍の没後1978年に新憲法が制定され、やっとカタルーニャ語は公用語としての地位を回復しました。
カタルーニャ地方は、こういった時代の変遷の状況の中で、独自の文化を守り抜いてきたのです。
どうしてカタルーニャ州独立の機運が高まってきているの?
カタルーニャ州独立の機運は日々高まっています。でも、それにはどんな理由があるのでしょうか。大きく2つの理由があると考えられています。
①経済に与える影響
カタルーニャ州がスペイン経済に与える影響は大きく、2012年時点でカタルーニャ州のGDPは2092億8百万ユーロと、スペイン国内のGDPの約20%を占める、経済の中心地でもあります。州のGDPは、アイルランド、ポルトガル、ギリシャのGDPと同規模です。
しかし、スペイン政府が緊縮財政を進めているため、カタルーニャ地方は恩恵より負担が大きく、独立したほうが自由で豊かな生活ができるという意見が広がりました。スペイン国内で強い経済を持っているからこそ、自治権の在り方に不満を持つようになったわけです。
②社会の風潮
もっとも多く語られる理由は経済面ですが、社会の風潮が、独立の機運を高めていっているとも言えます。カタルーニャ州の教育機関では、カタルーニャ州独立について教えられるようですし、日々独立賛成派がメディアで独立派の意見を促進しているため、どんどん社会にこの流れが広まってきているのです。
スペインの事は、スペイン人に聞いてみるべし
カタルーニャ州独立に至るまでの歴史と、その背景が少しばかりわかってきました。でも、一番気になるの当の本人たちがどう考えているかってことです。これから一体スペインはどうなるの?本当にカタルーニャ州は独立するの?みんなどう考えているの?を私の身近なスペイン人に聞いてみました。
バルセロナ出身者の考え
まずは、カタルーニャ州都バルセロナ出身の友人に話を聞いてみました。彼は今東京で働いていて、私が東京に住んでいた時は、トルティージャをよくご馳走してくれました。ちなみに、バルセロナの彼の家から、サグラダ・ファミリアが見えるんだそうです。うらやましすぎます!
閑話休題。バルセロナで生まれ育った生粋のバルセロナっ子としての意見を聞いてみました。
カタルーニャ州独立に対しての見方・・中立的
報道では、カタルーニャ人(Catalan)は、経済的な理由から独立したがっていると言われているけれど、それは本当の理由じゃない。昔から続いてきた文化や言語を守ることが一番の理由なんだ。
だから、必ずしも独立しなくてはいけないとは考えている。でも、歴史的、文化的、経済的に踏まえて考えると、独立すべき、とも言えるのかもしれない。カタルーニャ州独立に関しては、様々な見方や意見があるけれど、自分の周りではほとんどの人が同じように中立的に考えている人が多い。
実際にこのまま独立が進んでいっても、課題は山積みだから、どうなるのかは、まだわからないけれどね。FCチームがスペインリーグでプレーできなくなるのだけは残念だよ・・
彼の話を聞く限りだと、こういった中立的な立場を取りながらも、どちらかといえば独立には賛成と考えている人が多い印象を受けました。
マドリード出身者の考え
次に生まれも育ちもマドリードのスペイン人の意見も聞いてみましょう。ハビは、毎週土曜日の夜に見る政治討論番組が、3度の食事より好きというような政治論者でもあります。議論好きのスペイン人は、特に政治の議論が大好きなのです。
それでは、意見を聞いてみます。
カタルーニャ州独立に対しての見方・・懐疑的
カタルーニャ州は、独自の文化や言語を持っているから独立したいと言っているけれど、それを認めれば、スペイン国内の他の地域、バスク地方やガリシア地方、ましてやアンダルシア地方も国として独立すると言い出すと思う。どんな国にも、独自の文化があるでしょう?
例えば、日本だって大阪や京都は、東京や他の地域と違う文化や慣習、方言を持っている。それだけで、独立を認めるの?それだけで独立したいだなんで、ナンセンスだと思う。
彼の意見は、スペインを旅行していた際に他の地域のスペイン人に聞いた意見にも近いものがあります。他の地域出身のスペイン人は、あらかたこのように懐疑的、非現実的に見ている人が多い印象があります。
最後に
やはり、同じスペイン人でも、バルセロナ出身とマドリード出身の見方は全く違いますね。今後、どのように議論は進んでいくのでしょうか。私個人的にも、ひとつの地方の独立を認めてしまうと、どんどん国が独立をし始めてしまうのではないかと思います。
カタルーニャ州独立にあたっては、スコットランド独立運動にも双方が影響を及ぼしあっています。ひとつの自治体が国として独立してしまったら、ドミノ倒しのように、国が乱立してしまうのではないでしょうか・・?
今後も目が離せない、カタルーニャ州独立問題です。
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