緑色に、踊るようなレタリックのロゴが印象的なカールスバーグビール。日本の発売元はサントリーですが、実はデンマークのビールだということ、皆さん知っていましたか?
カールスバークは、世界140カ国以上にて飲まれる世界的なビールブランド。オランダのハイネケンやチェコのバドワイザー等次いで、世界4番目に大きなビール会社です。
デンマークって、あんまりビールのイメージがないですよね?ヨーロッパのビール生産国といえば、ドイツやベルギー、チェコなどがまず頭に浮かびます。先日初めて訪れたコペンハーゲンでは、皆ビールを飲んでいてびっくり。実はデンマーク人もビールが大好きなのです!
その中でも確固たる地位を築いているのは、もちろんカールスバーク。カールスベルクが世界的会社に飛躍するにあたっては、2人の創業者親子の存在がありました。対照的だった二人ではありますが、彼らの仕事から学ぶ事が多かったので、今回は「カールスベルク創業者親子に学ぶ仕事論」を紹介していきます。
科学面からビールの味を追求した父JC Jacobsen
現在のカールスバークビールの基礎の味を作り上げたのは、JC Jacobsenです。でも、会社を一から立ち上げたわけではありません。彼の父がすでにコペンハーゲンにビール醸造所を所有しており、JC Jacobsenは幼い頃からビール醸造に慣れ親しんでいました。
1835年、JCが24歳の時に父が亡くなり、父の醸造所を継ぐことに。その翌年、ドイツの下面発酵のババリアンラガービールの味を知ります。その味に衝撃を受けたJCは、ドイツの醸造所にババリアンビールの醸造法を学びに行き、1845年にコペンハーゲンの醸造所でラガービールを初めて醸造しました。これが、カールスバークビールの始まりです。
ラガービールには、新鮮な水と大麦、モルトが必要。新鮮な水を得るために、JCはコペンハーゲンの高台に醸造所を構えました。この醸造所は今カールスバーク記念館となっており、ビールのテイスティングからガイドツアーといった体験を行う事が出来る場所になっています。
JCは、醸造を始めてから常に自身で醸造や発酵のプロセスを研究していました。彼は、醸造における科学の重要性を感じており、旧醸造所の敷地内に、研究所を建設しました。そこでは、科学者を雇い、本格的に研究を行っていました。彼は、科学の面からとことん、ビールの味を突き詰めていったのです。
芸術性を追求した息子カール
カールスバークの名前の由来は、何だと思いますか?実は、「カール」というのは、JCの息子「Carl」から取られています。「バーク」はデンマーク語で、丘という意味。高台に作られた醸造所ゆえに付けられました。
名前の元になった息子カールですが、JCは一切自身で一から作り上げたカールスバークビールの資産をカールには与えませんでした。
一方、JCが父親の影響で子供の時からビール醸造に慣れ親しんでいたのと同様にカールもビール醸造に触れて育ち、ビール醸造の道を選びます。しかし、父JCから経営への参画は認められませんでした。
そこで、JCの妻、カールの母Lauraの助けをこっそり借りて、1871年JCのカールスバーク醸造所のすぐ隣にカールスバーク醸造所を立ち上げたのです!ここから、JCのカールスバークは「旧カールスバーク」と呼ばれ、カールの立ち上げた醸造所は「新カールスバーク」と呼ばれることに。
カールは、父親JCと違い、芸術家の気質を持っており、彼の特性を生かしたビール作りを行っていきます。また、彼の芸術への熱意は、ビール作りだけではなく、アート収集や芸術家の支援といった場所まで及びました。彼の収集作品は、新カールスバーク美術館に納められ、たくさんの人が美術を楽しむ場所まで作りだしています。
自分の特性を活かすということ
旧カールスバークと新カールスバークは、父JCが1887年に亡くなった後も別会社として続き、完全に統合を果たしたのは1997年の事でした。親子でありながら、全く違う特質を持った二人作り上げた新・旧カールスバークが一つとなり、今の形になったのです。
父JCと息子カールの二人は全く違うといえますが、彼らの仕事には共通項があります。それは、自分の特性を活かして新しい価値を作り上げたということ。同じビールでも、二人のアプローチは違ったものでした。父JCは、科学に熱意を注ぎ、一方息子カールは芸術的な面からビール醸造にアプローチしました。
きっと、二人が違ったからこそ、カールスバークビールは、双方の面で強化されていったのではないでしょうか。どんな仕事でも、自分の特性や熱意を注げるものを加えることが重要。
二人の仕事の姿勢には、誰にでもできる仕事ではなく、自分だからこそできる仕事を作るヒントが感じられませんか?
以上、デンマーク発の世界ビールブランドカールスバーク創業者親子の仕事論をお送りしました。
他の仕事論、インタビュー記事はこちら
コペンハーゲンのカールスバーク記念館: Visit Carlsberg
参考ウェブサイト : Carlsberg Group